今朝の朝日新聞の天声人語に寺田寅彦のことが引用されていました。寺田寅彦は東大物理学科の教授を勤め、地震や音響学の研究をしていましたが、ご承知の通り、多くの随筆を遺しました。中学の国語の教科書にも載っていました。電線にとまる雀の間隔の話とか、路線バスの混み方の分布の話をぼんやりと覚えています。今朝の天声人語は今回の新潟県中越沖地震で明らかになった原発のおそまつな防災設備に対して「地震はどうにもならないが、被災は人間次第である」という寅彦の持論を引用して、防災の心構えを説いたものです。
「天災は忘れた頃にやってくる」と最初に言ったのは寺田寅彦だとされていますが、随筆や本人の私信には全く同じ表現はどこにも出てこないそうです。しかし、随所にこれと似たことが言われているのは確かです。松本哉著「寺田寅彦は忘れた頃にやってくる」(集英社)には寺田が友人の小宮豊隆に宛てた手紙の以下のような文が引用されています:『調査の必要から昔の徳川時代の大震火災の記録を調べているが、今度(注:関東大震災)われわれがなめたのと同じような経験を昔の人が疾(とう)になめ尽くしている。それを忘却してしまって勝手なまねをしていたためにこんなことになったと思う。』
話はずれますが、学生の頃、寺田寅彦の和太鼓や能管(だったかな?)の振動特性の論文があることをどこかで読んで、本郷の中央図書館で論文をコピーしてきたことがありました。寅彦の当時は、東大の物理学科は新しく入ってきた量子論や相対性理論の研究を始める人が多く、寅彦のように古典力学を使った研究を続けている先生は学生には人気がなかったようです。しかし、もちろん量子力学でなければ解けない問題も多いわけですが、興味のある問題が古典物理学で解けるのであれば古典物理学でよいわけで、流行に惑わされずに我が道を行く人もいていいと思います。
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