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2009年7月15日 (水)

歓びの中で才能は伸びる

 会議があって、朝から霞ヶ関に出かけました。午後一番に講義があるので、11時半にはそちらをでなければなりません、などと断っておいたのですが、会議は20分足らずで終わってしまいました。なんだ、このために往復2時間以上もかけて来たのか、と思いつつ、一方、だらだら続く無駄な会議よりはずっといいか、などと思って外に出ると、足は自然に、往きに目に止まった霞ヶ関のビルのすぐ下の本屋へと向かっていました。「音楽」のコーナーで何か演奏家の書いたエッセイがないかと思って探したら、ありました。千住真理子さんの「聞いて、ヴァイオリンの詩」という本が目に止まったのです。早速買い求めて帰りの電車の中で読みました。読んで数頁目に出ていた次の言葉に注意を惹かれました。「確かなことがいえるのは“歓びの中に才能は伸びる”ということである。いやなことをいやいや頑張った根性モノでは、才能は確実にしおれていくと私は確信している。」なるほど、確かにそうだと思いました。自分の中である程度モノになったものというのは、やはり好きでやってきたこと、熱中できたことだと思いました。

千住さんは幼い頃からヴァイオリンが好きで、先生についてヴァイオリンを習い、コンクールでは優勝し、マスコミからも注目されて天才少女と呼ばれ、周囲からは超順調な成長を遂げていると思われましたが、20歳の頃行き詰まり、精神的変調も来し、クラシックもヴァイオリンの音も聞くのがいやになって避けていたそうです。ヴァイオリンはもう金輪際弾くまいと思って止めたのですが、ある日母親がしまっておいた箪笥の中のヴァイオリンを見つけて弦をはじいてみて、4本の弦の出す和音の美しさに今更ながら気づいた、といいます。丁度そんな折、あるホスピスの人から千住さんに演奏の依頼がありました。もう、ヴァイオリンは弾いていませんから、という千住さんに、「ヴァイオリニストとしてお願いしているわけではない。昔、あなたのファンだった人が余命幾ばくもないのです。」と言ったのです。千住さんはホスピスを訪ねて演奏し、ホールまで来て演奏が聴けなかった独りの人のためにも其の部屋に出向いて、「最後にバッハが聴きたい」というリクエストに応えて、バッハを弾いたのですが、後からその人は次の日に亡くなったと知らされました。そのときの経験が千住さんに再びヴァイオリンを手に取るきっかけとなった、と言うことでした。

久しぶりに心に迫るいい本に出会いました。

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