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2008年7月22日 (火)

ショパンの心臓

Scienceの最新号の「RANDOM SAMPLES」の欄にショパンの心臓のことが書かれていました。ショパンは1849年に39歳でフランスで亡くなっていますが、医師の死亡報告書には肺及び喉頭の結核と記されているそうです。ショパンの遺志により心臓は友人達によって取り出され、コニャックを満たした広口瓶に漬けられて故郷ポーランドのワルシャワの教会に送られた、ということです。

最近になって、ワルシャワ分子生物学・細胞生物学国際研究所のMichal Wittらはショパンは実は嚢胞性線維症だったのではないかと考え、これを調べるために、瓶を開けたいと希望していることが報じられました。Wittによれば、ショパンは幼少時に遺伝性の病を持っていたと言うことです。例えば、呼吸器官に感染しやすく、病弱で、思春期も遅れました。成人したショパンは小柄で時に階段を上るのが困難で、コンサートの後、ステージから降りるのに担ぎ出されなければなりませんでした。もし、ショパンが嚢胞性線維症だったと言うことになれば、これは嚢胞性線維症患者にとって特別なニュースになるだろう、とWittは述べています。

Wittはショパンの生誕200年に当たる2010年までに彼の心臓を調べたいと希望していて、コンピュータートモグラフィーやDNA診断を行う絶好の機会だろうと述べています。当局もこれに許可を与えることを検討している、と締めくくってありました。

コンピュータートモグラフィーもDNA診断も近年急速に発展してきた最新の技術ですが、この間150年以上も手を付けずに取っておけたお陰で、このような最新の技術を駆使した診断ができそうで興味が持たれます。嚢胞性線維症は日本ではとても希少な病気ですが、ヨーロッパのユダヤ人のある系統(アシュケナジー)では25人に一人の保因者がいると言うことです。

Wikipediaによれば、 嚢胞性線維症の「原因は塩素イオンチャネル(CFTR)の遺伝子異常で、水分の流れに異常をきたし粘液の粘度が高くなる。鼻汁の粘性が強くなると副鼻腔に痛みを感じ、痰の粘性が強くなると、気道を閉塞し肺炎を繰り返すようになり、ついには気管支拡張症をきたす。胆汁の粘性が強くなると、胆石をおこしたり、膵炎をおこしたり、肝機能障害からついには肝硬変をきたす。医療の発達により寿命はのびてきたとはいっても30代である。」ということです。確かに、「気道を閉塞し肺炎を繰り返す」辺りは死亡診断書と合致します。

藤原正彦さんが「天才の栄光と挫折」の後書きに「天才というのは神様のような人ではなくて、実は天国と地獄の両方を味わった人であることが分かった。」というようなことを書いておられますが、ショパンもそういう天才のひとりだと思いました。

それにしても日本人としては「自分の心臓を取り出して保存してほしい」というような遺言を残すのは尋常ではないような気がします。欧米ではそういうことはよくあるのかどうか。そういえば、大森貝塚の発見者のエドワード・モースは死んだら自分の脳を(あれは確か友人から頼まれて)保存することに同意した、と書いてあるのを読んだことがありますが。

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